中華一番は清末を舞台とした歴史グルメ漫画である。中華一番!極は四川省が舞台である。四川料理は中華料理の主要ジャンルであるが、四川省は内陸部であり、日本人にとってかなり縁遠い。東北はウラル・アルタイ語族の文化圏であるし、広東は海を通してつながっている。
私には本場の四川料理の辛さを受け付けないところがある。このような時に日本人の遺伝子を持っていると感じる。危険ドラッグ犯罪者が激辛の四川料理を好むと言っていたことがあるが、危険ドラッグのせいで味覚が破壊されたのだろう。
本書では四川省の厳しい気候の冬の寒さや夏の湿気をしのぐために強烈な辛さを極めるようになったと説明する(7頁)。料理は、その地方の風土に合ったものである。外国人に合っているとは限らない。
面白いことに本書でも日本人の母を持つキャラクターに重慶料理は舌が痺れて味が分からないと言わせている。そこで主人公は四川料理の正しい食べ方を紹介する。それは唐辛子を選り分けて鶏肉だけを食べることである(11頁)。そうすると辛さが移って美味しくなる。やはり激辛を楽しむことはグルメとして邪道である。
その後に主人公は故人の美味しいタンタンメンを再現しようとするが、それは「辛さが滑らかで重慶料理の暴力的な辛さとはまるで違う」ものであった(30頁)。